【1級FP監修】認知症による資産凍結対策とは?家族信託・任意後見・法定後見を比較

認知症による資産凍結対策と家族信託・成年後見制度の比較

認知症になると、本人名義の銀行口座から生活費や介護費を引き出せなくなったり、不動産を売却できなくなったりする可能性があります。一般に「認知症による資産凍結」と呼ばれる問題です。

ただし、認知症と診断されたことだけを理由に、すべての口座や財産が自動的に凍結されるわけではありません。

問題になるのは、金融機関や契約の相手方が本人の意思を確認できず、取引や契約を進められない場合です。
また、家族であっても、本人の財産を当然に管理・処分できるわけではありません。

判断能力があるうちに行う対策と、判断能力が低下した後に利用する制度を分けて考えることが重要です。
本記事では、金融機関の代理人制度、家族信託、任意後見、法定後見、遺言書の違いと注意点を解説します。

【結論】判断能力があるうちであれば、金融機関の代理人制度、任意後見、家族信託、遺言書などを検討できます。すでに判断能力が不十分な場合には、法定後見制度が中心的な選択肢となります。

全国対応オンライン相談

認知症による「資産凍結」とは

「資産凍結」は、法律上の正式な用語ではありません。

本人の判断能力が低下し、金融機関や契約の相手方が本人の意思を確認できなくなることで、次のような取引が難しくなる状態を指す一般的な表現です。

  • 預貯金の払戻しや定期預金の解約
  • 振込先や口座振替の変更
  • 株式や投資信託などの売却
  • 生命保険の解約や契約変更
  • 自宅や収益不動産の売却
  • 賃貸借契約や施設入所契約の締結

認知症という診断名だけで判断能力の有無が一律に決まるわけではありません。判断能力は、取引の内容や契約時の本人の状態などを踏まえて個別に判断されます。

内閣府の令和8年版高齢社会白書によると、2022年の65歳以上の認知症高齢者は443.2万人、有病率は12.3%と推計されています。軽度認知障害(MCI)は558.5万人、有病率15.5%です。

MCIと認知症は異なる状態であり、「4人に1人が認知症」という意味ではありません。

認知症と診断されると銀行口座は凍結されるのか

認知症と診断された時点で、銀行がすべての取引を自動的に停止するわけではありません。

一方、窓口で本人の意思を確認できない場合や、取引内容が本人の通常の利用状況と大きく異なる場合などには、本人の財産を保護するため、払戻しや振込みなどが制限されることがあります。

通帳、キャッシュカード、暗証番号を家族が管理していても、家族に法的な代理権が与えられたことにはなりません。

本人の承諾や適切な権限がないまま利用すると、金融機関との規約上の問題や、ほかの親族とのトラブルにつながる可能性があります。

本人の意思確認ができず、生活費・入院費・介護施設費などの支払いに困っている場合は、まず取引銀行へ相談してください。

本人との関係や資金の使途を示す書類などにより、個別に対応してもらえる可能性があります。ただし、取扱いは金融機関や状況によって異なります。

判断能力があるうちと低下した後では対策が異なる

主な制度の違いは次のとおりです。

方法準備・利用する時期対象主な特徴と限界
金融機関の代理人制度等原則として本人の判断能力があるうちその金融機関の口座手続・権限は金融機関ごとに異なる
任意後見判断能力があるうちに契約し、低下後に開始契約で定めた法律行為任意後見監督人の選任後に効力が生じる
家族信託原則として判断能力があるうち信託財産に組み入れた財産財産管理・承継に利用できるが、身上保護は対象外
法定後見判断能力が不十分になった後類型や審判で定められた範囲家庭裁判所が後見人等を選任・監督する
遺言書遺言能力があるうち原則として死亡後の財産承継生前の財産管理や口座取引の対策にはならない

どれか一つを選べばすべて解決するとは限りません。
財産の種類、本人の希望、家族構成、介護方針などによっては、複数の制度を組み合わせます。

判断能力があるうちに行いたい準備

財産と契約先を一覧にする

最初に、預貯金、不動産、有価証券、保険、年金、借入金、毎月の支払いなどを整理します。

利用している金融機関や証券会社、保険会社も一覧にしておくと、緊急時に家族が確認しやすくなります。

財産情報を整理する際は、【関連記事】エンディングノートに関する記事も参考になります。

金融機関の代理人制度を確認する

金融機関によっては、代理人の届出、代理人カード、家族向けの財産管理サービスなどを設けています。

利用条件や代理人ができる取引は金融機関ごとに異なるため、本人が手続できるうちに、預金・証券・保険それぞれの取扱いを確認してください。

任意後見契約を検討する

任意後見は、本人の判断能力があるうちに、将来代理を依頼する人と権限の範囲を決めておく制度です。

任意後見契約は公正証書で締結します。ただし、契約を結んだだけでは任意後見人の代理権は発生しません。

本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から契約の効力が生じます。

任意後見人には、契約で定められた代理権がありますが、法定後見人のような法律上の取消権はありません。

家族信託を検討する

「家族信託」は法律上の正式名称ではなく、一般に、家族などを受託者とする民事信託を指します。

例えば、親を委託者兼受益者、子を受託者として、不動産や金銭を信託財産に組み入れ、子が信託目的に従って管理・処分する仕組みが考えられます。

単に管理権限だけを家族へ渡すのではなく、信託財産を受託者へ移転するなどして管理する点が特徴です。

一般の信託契約について、公正証書は一律の成立要件ではありません。ただし、契約内容や本人の意思を明確にし、金融機関・登記手続などを円滑に進めるため、公正証書が利用されることがあります。

家族信託には次の限界があります。

  • 信託財産に組み入れていない財産は管理できない
  • 本人が行った契約を当然に取り消せるわけではない
  • 施設入所契約などの身上保護全般を当然に代理できない
  • 医療行為への同意権が当然に与えられるわけではない
  • 預金・証券・NISAなどは金融機関や制度上の制約がある
  • 不動産に抵当権がある場合は金融機関との調整が必要になる
  • 税務・登記上の検討が必要になる

そのため、家族信託は成年後見制度の完全な代替制度ではありません。

遺言書も別途検討する

遺言書は、原則として本人が死亡した後の財産承継について指定するものです。生前の預金管理や不動産売却を家族に任せる制度ではありません。

認知症対策として家族信託や任意後見を利用する場合でも、信託財産以外の承継方法を定めるため、遺言書を併用することがあります。

自筆証書遺言書の作成方法については、【関連記事】自筆証書遺言書保管制度の記事をご確認ください。

判断能力が低下した後に検討する法定後見制度

判断能力がすでに不十分で、新たな委任契約や家族信託契約を有効に締結することが難しい場合には、法定後見制度を検討します。

2026年9月時点の法定後見制度には、次の3類型があります。

類型対象となる本人の状態
後見判断能力が欠けているのが通常の状態
保佐判断能力が著しく不十分
補助判断能力が不十分

家庭裁判所が本人の状態や財産、生活状況などを確認し、成年後見人、保佐人または補助人を選任します。

家族を候補者として申し立てることはできますが、候補者が必ず選任されるわけではありません。弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職や法人、複数の後見人等が選任される場合があります。

後見人等の業務には、本人の財産管理に加えて、介護施設への入所契約など、生活・療養に関係する法律行為の支援が含まれます。
ただし、実際の介護や医療行為への同意を当然に代行する制度ではありません。

現行制度では、預金の解約や不動産売却など、申立てのきっかけとなった手続が終わっても、それだけを理由に法定後見を終了することはできません。

原則として、本人が亡くなるか、判断能力の回復などにより開始原因がなくなり、家庭裁判所が審判を取り消すまで続きます。

成年後見人は本人の自宅を売却できるか

成年後見人が、本人の居住用建物またはその敷地を売却、賃貸、賃貸借契約の解除、抵当権の設定などによって処分する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。

居住用不動産に当たるかどうかは、本人が現在住んでいるかだけではなく、過去の利用状況や将来戻る可能性なども含めて判断される場合があります。

家族信託では、本人の判断能力があるうちに不動産が有効に信託され、信託契約で受託者に処分権限が与えられ、売却が信託目的に反しない場合には、受託者が売却できる可能性があります。

ただし、住宅ローンや抵当権、信託契約の内容、受益者の利益、税務などの確認が必要です。「家族信託なら自宅を自由に売却できる」とは限りません。

各制度にかかる費用

法定後見の申立てでは、原則として申立手数料800円、登記手数料2,600円のほか、郵便切手、戸籍・診断書などの取得費用がかかります。鑑定を行う場合には鑑定費用も必要です。

後見人等の報酬は一律ではありません。後見人等から申立てがあった場合に、家庭裁判所が業務内容や本人の財産などを考慮して決定し、本人の財産から支払われます。

任意後見契約では、公正証書の基本手数料、登記嘱託手数料、収入印紙、正本・謄本代、郵送料などが必要です。

任意後見が開始した後は、任意後見監督人の報酬が本人の財産から支払われる場合があります。

家族信託には一律の費用基準がありません。
契約書作成、公正証書、信託登記、登録免許税、専門家報酬、信託口口座の手続など、財産と設計内容によって異なります。

最新の手数料や必要書類は、手続を行う時点で家庭裁判所、公証役場、法務局、金融機関などへ確認してください。

2026年の成年後見制度改正について

2026年6月24日、「民法等の一部を改正する法律」が公布されました。

この改正には、現在の後見・保佐を廃止して補助制度へ一元化し、本人に必要な範囲や期間で制度を利用できるようにする見直しなどが含まれています。

ただし、成年後見制度に関する主な改正部分は、公布の日から2年6か月以内の政令で定める日に施行されます。

2026年9月15日時点では未施行であり、現在の手続には現行の後見・保佐・補助制度が適用されます。

施行日や実務上の取扱いが決まり次第、最新情報を確認する必要があります。

状況別の考え方

本人の判断能力に問題がない場合

財産一覧の作成、金融機関の代理人制度、任意後見、家族信託、遺言書などを比較します。

本人の希望を確認し、誰に何を任せるか、介護費をどの財産から支払うかを整理することが重要です。

判断能力が低下し始めている場合

認知症という診断名だけで契約の可否を判断せず、本人が契約内容や結果を理解できるかを個別に確認します。

家族だけで判断せず、必要に応じて医師、公証人、弁護士、司法書士などへ早めに相談してください。

本人の意思確認が難しい場合

新たな家族信託や任意後見契約の締結が難しい可能性があります。

介護費などの支払いについては取引銀行へ相談し、継続的な財産管理が必要な場合には、法定後見制度を検討します。

成年後見人制度・家族信託紹介
相談はこちらをクリック

賢く使う

認知症による「資産凍結」は、診断だけで一律に発生するものではありません。

一方、本人の意思を確認できなくなると、銀行取引、不動産売却、保険・証券手続などが制限される可能性があります。

判断能力があるうちであれば、金融機関の代理人制度、任意後見、家族信託、遺言書などを検討できます。

すでに判断能力が不十分な場合には、法定後見制度が中心的な選択肢となります。

PrivateFpでは、将来必要となる生活費・介護費、保有資産、家族の希望をFPの立場から整理し、制度選択の検討材料を提供しています。

自己決定権の尊重で、ご自身が事前に決定できる任意後見制度や柔軟にオーダーメイドができる家族信託が賢い選択ではないでしょうか。

相談者に合った「最適解」を一緒に検討、お気軽に相談ください。

成年後見人制度・家族信託紹介
相談はこちらをクリック

佐久眞 盛春の顔写真
執筆・監修: 佐久眞 盛春 (CFP®/1級FP技能士)
Private Fp 合同会社 代表社員。NISA・iDeCoなどの資産運用、生命保険見直し、家計改善、ローン相談のFP実務支援、キャリアコンサルティングが専門。 プロフィールCFP®情報

作成方法:一次情報(法令・公的統計)を確認のうえ執筆。生成AIは草案作成・表現整理に限定し、最終チェックは人手で実施。内容は執筆時点の情報であり、投資勧誘・個別推奨ではありません。

Q&A よくある質問

認知症と診断されると銀行口座は自動的に凍結されますか?

診断だけですべての口座が自動的に凍結されるわけではありません。ただし、金融機関が本人の意思を確認できない場合には、取引が制限されることがあります。

家族が本人名義の預金を引き出してもよいですか?

家族という理由だけで当然に引き出せるわけではありません。本人の意思確認や適切な代理権が原則として必要です。本人の生活費や医療・介護費で緊急に必要な場合は、自己判断でカードを使用せず、取引銀行へ相談してください。

認知症になった後でも家族信託を契約できますか?

認知症の診断だけで契約できなくなるわけではありませんが、契約時に本人が内容と結果を理解する意思能力が必要です。意思能力がなければ契約は無効となるため、早めの検討が重要です。

家族信託と任意後見は併用できますか?

併用することは可能です。家族信託で特定の財産を管理し、任意後見で信託財産以外の財産や生活・療養に関する法律行為を支援する方法などが考えられます。

成年後見人には家族を指定できますか?

家族を候補者として申し立てることはできますが、選任するのは家庭裁判所です。希望した家族が必ず選任されるわけではありません。

遺言書を作れば認知症による資産凍結を防げますか?

遺言書は原則として死亡後の財産承継について定めるものです。生前の預金管理や不動産売却を家族へ任せるものではないため、遺言書だけでは認知症による資産管理上の問題を防げません。

税制・法律・制度の取扱いについての記述は、発信時の関係法令等に基づき記載したものです。今後、変更の場合もあります。

一次情報 公式サイト 一般社団法人 信託協会ホームページ

一次情報 公式サイト 裁判所ホームページ 後見ポータルサイト

ホーム » ライフプラン・家計のお役立ち記事 » 【1級FP監修】認知症による資産凍結対策とは?家族信託・任意後見・法定後見を比較
全国対応オンライン相談

成年後見人制度・家族信託紹介
相談はこちらをクリック

お問い合わせ
LINE相談受付中

公式LINE窓口
外部サイト口コミ最高点
専任FPが徹底サポートイメージ
マネーセミナーイメージ

満足度90%以上初心者向けウェビナー
金融リテラシーを身に付けよう♪

オンライン相談イメージ

約30分無料オンラインFP相談
お金の悩みを解決!

資産凍結の対策

とくとくプラス、セキュリティソフト
危険から身を守るセキュリティソフト

損をしないため適正な売却価格を知ろう

固定費を下げて貯蓄に

毎月の返済額を下げる

新しく住宅ローンを検討

意外と保険料が下がる