【1級FP監修】自筆証書遺言書保管制度とは?費用・必要書類・手続き・メリット・デメリットを解説

自筆証書遺言は、自分で作成できるため比較的利用しやすい一方、紛失、改ざん、発見されないといった問題が生じることがあります。
「自筆証書遺言書保管制度」を利用すると、自分で作成した遺言書の原本を法務局に預けることができます。法務局に保管された遺言書は、相続開始後の家庭裁判所による検認も不要です。
ただし、法務局は遺言内容の法的な有効性や遺留分への影響まで保証するわけではありません。
本記事では、自筆証書遺言書保管制度の費用、必要書類、手続き、通知制度、公正証書遺言との違い、利用時の注意点を解説します。
【結論】遺言の選択肢、法務局にで保管する手軽な自筆証書遺言書保管制度を利用しましょう。
自筆証書遺言書保管制度とは
自筆証書遺言書保管制度は、遺言者本人が作成した自筆証書遺言を、法務局の遺言書保管所に預ける制度です。
2020年7月10日に開始されました。法務局では、遺言書の原本に加えて画像データや遺言者、受遺者、遺言執行者などの情報を管理します。
ただし、利用者が遺言書をインターネット上へアップロードする制度ではありません。保管申請には、原則として遺言者本人が法務局へ出向く必要があります。
2026年の遺言制度改正はまだ施行されていない
2026年6月24日、遺言制度を見直す「民法等の一部を改正する法律」が公布されました。
改正法には、自筆証書遺言の押印を任意とする見直しや、パソコンなどで作成した情報を法務局で保管する「保管証書遺言」の新設が含まれています。
ただし、2026年9月15日時点では、いずれもまだ施行されていません。
押印に関する改正は公布から1年以内、保管証書遺言は公布から3年以内の政令で定める日に施行される予定です。
したがって、現時点で自筆証書遺言を作成するときは、本文・日付・氏名の自書と押印が必要です。「現在すでに印鑑が不要」「デジタル遺言を利用できる」という取扱いではありません。
自筆証書遺言の作成要件
自筆証書遺言を有効に作成するには、現行の民法上、次の要件を満たす必要があります。
- 遺言書の本文を遺言者本人が自書する
- 作成日を年月日まで具体的に自書する
- 氏名を自書する
- 押印する
- 加除訂正を行う場合は、法定の方式に従う
「令和○年○月吉日」のように具体的な日付を特定できない記載は避けなければなりません。
財産目録については、パソコンで作成した書類や登記事項証明書、通帳のコピーなどを利用できます。ただし、自書しない財産目録の各ページに、遺言者本人の署名と押印が必要です。
両面に記載がある場合は、両面に署名・押印します。
また、遺言ができる年齢は15歳以上ですが、年齢だけで有効になるわけではありません。遺言時に、その内容と結果を理解できる遺言能力が必要です。
法務局へ預ける場合の様式
法務局へ保管を申請する場合は、民法上の要件に加えて、次の様式を守る必要があります。
- A4サイズの用紙を使用する
- 用紙の片面だけに記載する
- 上5mm、下10mm、左20mm、右5mm以上の余白を設ける
- 複数枚の場合は、総ページ数が分かるページ番号を記載する
- ホチキスなどでとじない
- 封筒に入れない
- 消すことのできない筆記具を使用する
余白部分には、ページ番号を含めて文字や記号を書かないよう注意してください。
自筆証書遺言書保管制度のメリット
紛失・改ざんを防ぎやすい
原本を法務局が保管するため、自宅で保管する場合と比べて、紛失、廃棄、隠匿、改ざんなどのリスクを抑えられます。
家庭裁判所の検認が不要
法務局に保管された自筆証書遺言は、相続開始後の家庭裁判所による検認が不要です。
一方、自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認が必要です。
検認は、遺言書の状態や内容を確認して相続人へ知らせるための手続であり、遺言書の有効・無効を判断するものではありません。
通知制度を利用できる
遺言者が希望して所定の手続きを行った場合、遺言者の死亡後に法務局から指定した人へ、遺言書が保管されていることを通知してもらえます。
比較的低い手数料で利用できる
保管申請の手数料は、遺言書1通につき3,900円です。公正証書遺言と比べて、作成時の費用を抑えられる場合があります。
デメリット・注意点
法務局は内容の有効性を保証しない
法務局が確認するのは、民法や保管制度で定められた形式面です。
次のような事項までは審査・保証されません。
- 遺言者に十分な遺言能力があったか
- 遺言内容が法的に有効か
- 財産を正確に特定できているか
- 遺留分を侵害していないか
- 内容どおりに相続手続を行えるか
- 相続人間の紛争を防げるか
遺言書が法務局に保管されたことだけで、法律上の問題がすべて解消されるわけではありません。
本人が法務局へ出向く必要がある
保管申請ができるのは遺言者本人です。家族や専門家による代理申請や、郵送による保管申請はできません。
遺言は生前の財産管理には利用できない
遺言書が効力を生じるのは、原則として遺言者が死亡した後です。
認知症などによって判断能力が低下した場合の財産管理については、任意後見、法定後見、家族信託などを別に検討する必要があります。
遺言があっても相続問題を完全には防げない
遺言書は、財産の承継方法を明らかにして相続手続を進めやすくする場合があります。
一方で、遺留分侵害額請求、遺言能力、財産の特定、遺言解釈などをめぐって争いになる可能性は残ります。
費用・手数料一覧
2026年9月15日時点の主な手数料は次のとおりです。
| 手続き | 手数料 |
|---|---|
| 遺言書の保管申請 | 1通3,900円 |
| モニターによる閲覧 | 1回1,400円 |
| 原本の閲覧 | 1回1,700円 |
| 遺言書情報証明書の交付 | 1通1,400円 |
| 遺言書保管事実証明書の交付 | 1通800円 |
| 保管申請の撤回 | 無料 |
| 住所・氏名等の変更届 | 無料 |
郵送による証明書の交付を請求する場合などは、別途郵送料が必要になることがあります。申請前に法務省の最新手数料を確認してください。
申請方法と手続きの流れ
①自筆証書遺言を作成する
民法上の要件と、法務局保管制度で定められた用紙・余白・ページ番号などのルールに従って作成します。
法務局は遺言内容の相談には応じていないため、複雑な内容は事前に法律の専門家へ確認することが重要です。
②申請する法務局を決める
次のいずれかを管轄する遺言書保管所へ申請できます。
- 遺言者の住所地
- 遺言者の本籍地
- 遺言者が所有する不動産の所在地
すでに別の遺言書を保管している場合、追加の保管申請は最初に申請した遺言書保管所で行います。
③保管申請書を作成する
法務省のウェブサイトから所定の申請書をダウンロードし、必要事項を記入します。法務局の窓口でも入手できます。
④来庁日時を予約する
保管申請の来庁手続には予約が必要です。ウェブ、電話または法務局の窓口で予約できます。
予約方法によって必ず早く手続きできるというものではないため、余裕を持って予約してください。
⑤必要書類等を準備する
主な持参物は次のとおりです。
- 自筆証書遺言の原本
- 保管申請書
- 本籍と戸籍の筆頭者が記載された、発行後3か月以内の住民票の写し等
- マイナンバーカードや運転免許証などの顔写真付き本人確認書類
- 3,900円分の手数料
必要書類は個別事情によって異なることがあるため、申請先の法務局で確認してください。
⑥本人が法務局で申請する
予約した日時に、遺言者本人が法務局へ出向きます。
手続きが完了すると保管証が交付されます。保管番号などが記載されているため、紛失しないよう保管しましょう。
遺言者が死亡した後の通知制度
通知には、主に次の2種類があります。
指定者通知
遺言者が希望し、必要な同意手続きを行って通知先を指定した場合、法務局が遺言者の死亡を確認した時点で、指定した最大3人へ遺言書が保管されていることを通知します。
通知されるのは、遺言書の存在・保管の事実であり、遺言内容ではありません。
また、通知先に指定されただけでは、遺言書の閲覧や証明書請求の資格が与えられるわけではありません。
関係遺言書保管通知
遺言者の死亡後、相続人、受遺者、遺言執行者などの関係者の一人が、遺言書情報証明書の交付を受けるか、遺言書を閲覧した場合に、他の関係相続人等へ通知されます。
死亡しただけで必ず自動的に通知される制度ではありません。また、遺言書保管事実証明書を取得しただけでは、この通知は行われません。
死亡後に相続人等ができる手続き
遺言者の死亡後、相続人、受遺者、遺言執行者などは、一定の要件を満たす場合に次の手続きを行えます。
- 遺言書が保管されているかを確認する
- 遺言書保管事実証明書を取得する
- 遺言書情報証明書を取得する
- 法務局のモニターで遺言書を閲覧する
- 原本が保管されている法務局で原本を閲覧する
遺言書情報証明書は相続手続に使用できますが、金融機関や登記手続では、戸籍、本人確認書類などの追加書類を求められることがあります。
自宅保管・法務局保管・公正証書遺言の違い
| 項目 | 自筆証書遺言・自宅保管 | 自筆証書遺言・法務局保管 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作成 | 遺言者本人 | 遺言者本人 | 公証人が関与 |
| 証人 | 不要 | 不要 | 原則2人以上 |
| 主な作成時費用 | 原則として実費のみ | 保管申請3,900円 | 財産の価額等により異なる |
| 原本の保管 | 遺言者等 | 法務局 | 公証役場 |
| 家庭裁判所の検認 | 原則必要 | 不要 | 不要 |
| 内容の確認 | なし | 法務局は形式面のみ | 公証人が内容作成に関与 |
| 主な注意点 | 紛失・改ざん・未発見 | 本人出頭、内容の有効性は保証されない | 費用、証人の手配等 |
財産関係や家族関係が比較的単純で、費用を抑えながら紛失等を防ぎたい場合は、法務局保管制度が選択肢になります。
一方、財産関係が複雑な場合、事業承継、再婚家庭、相続人以外への遺贈、遺留分への配慮、遺言能力をめぐる争いが予想される場合は、公正証書遺言や法律専門家への相談も含めて検討することが重要です。
保管申請の撤回と遺言の撤回は別の手続き
法務局から遺言書の返却を受ける「保管申請の撤回」は、遺言書の保管をやめる手続きです。
保管申請を撤回しただけで、遺言書の法的効力が当然に失われるわけではありません。返却された遺言書は、方式を満たしていれば通常の自筆証書遺言として残る可能性があります。
遺言内容そのものを撤回・変更する場合は、民法に従って新しい遺言を作成するなど、別の対応が必要です。
逆に、新しい遺言書を作成しただけでは、法務局に保管されている以前の遺言書の保管申請が自動的に撤回されるわけではありません。
付言事項に法的拘束力はあるか
自筆証書遺言には、付言事項として、家族への感謝、財産の分け方を決めた理由、葬儀や供養に関する希望などを記載できます。
ただし、一般に付言事項そのものには法的拘束力がありません。相続人に必ず実行してもらいたい法律上の事項とは分けて考える必要があります。
まとめ
自筆証書遺言書保管制度は、自分で作成した遺言書を法務局で保管し、紛失や改ざんなどのリスクを抑える制度です。
保管申請手数料は1通3,900円で、法務局に保管された遺言書は家庭裁判所の検認も不要です。
一方、法務局が確認するのは形式面であり、遺言内容の有効性や遺留分への影響、遺言能力まで保証されるわけではありません。
PrivateFpでは、遺言・相続に伴う家計、資産承継、納税資金、生命保険などの資金計画をFPとして整理します。
相談者に合った「最適解」を一緒に検討、お気軽に相談ください。
個別の遺言条項の作成、法的有効性の判断、登記申請、相続人間の交渉・紛争対応などの法律事務は行いません。個別の法的判断や書類作成が必要な場合は、ご相談内容に応じて弁護士、司法書士、行政書士等への相談をご案内します。
Q&A よくある質問
-
遺言の書き方も法務局で教えてくれますか?
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法務局では遺言書の内容に関するご質問・ご相談には一切応じていない。
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法務局は遺言内容を確認してくれますか?
-
法務局が確認するのは主に形式面です。遺言内容の法的な有効性、遺言能力、遺留分への影響などの相談・保証は行っていません。
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家族や専門家が代理で保管申請できますか?
-
できません。保管申請は遺言者本人が法務局へ出向いて行う必要があり、代理申請や郵送申請は認められていません。
-
法務局に保管すれば検認は不要ですか?
-
法務局に保管された遺言書は、家庭裁判所の検認が不要です。自宅などで保管された自筆証書遺言は、原則として検認が必要です。
-
遺言者の死亡後は必ず家族へ通知されますか?
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必ず通知されるとは限りません。指定者通知を希望して必要な設定をしている場合や、関係者が遺言書情報証明書を取得・閲覧した場合など、通知ごとに条件があります。
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生前に家族が遺言内容を確認できますか?
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生前に閲覧できるのは原則として遺言者本人だけです。相続人等は遺言者の生前に内容を確認できません。
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保管後に遺言内容を変更できますか?
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内容を変更する場合は、新しい遺言書を作成するなどの対応が必要です。法務局に保管されている遺言書へ直接書き足すことはできません。
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公正証書遺言とどちらを選べばよいですか?
-
費用だけでなく、財産・家族関係の複雑さ、遺言能力をめぐる争いの可能性、専門家の関与が必要かどうかを踏まえて判断します。すべての人に同じ方法が適しているわけではありません。
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