【1級FP監修】賃貸経営は黒字でも資金不足に 家賃収入を守る資金繰りと修繕への備え

「毎月家賃が入っているのに、手元のお金が思ったほど増えない」「確定申告では黒字なのに、修繕費の支払いが不安」。賃貸経営では、このようなことが起こります。
安定した経営を続けるためには、家賃収入や利回りに加えて、税金・ローン返済・修繕費を支払った後に、いくら現金が残るかを確認することが大切です。
今回は、賃貸物件を所有している方や、これから購入・相続する方に向けて、資金繰りの基本と見直しのポイントを解説します。
【結論】税金・返済・修繕を見込んだうえで、キャッシュフローを確認すること
利益と手元のお金は一致しない
個人の不動産所得は、原則として「総収入金額-必要経費」で計算します。
ただし、ローン返済の元金部分は必要経費になりません。
一方、減価償却費は、その年の現金支出を伴わなくても必要経費になります。
この違いが、所得と手元資金のずれを生みます。
例えば、次のような年間収支を考えてみましょう。
| 項目 | 不動産所得の計算 | 現金の収支 |
|---|---|---|
| 家賃収入 | +600万円 | +600万円 |
| 管理費・固定資産税等 | -120万円 | -120万円 |
| ローン利息 | -80万円 | -80万円 |
| 減価償却費 | -100万円 | 支出なし |
| ローン元金返済 | 経費に含めない | -360万円 |
| 差引額 | 所得300万円 | 現金の増加40万円 |
※説明用の仮定例です。家賃の未収や費用の未払はなく、青色申告特別控除、所得税・住民税、追加の設備投資などは考慮していません。
この例では所得が300万円あっても、現金の増加は40万円です。さらに所得税・住民税の納付や予定外の支出が重なると、預金を取り崩す可能性があります。
確定申告書とあわせて、実際のお金の動きをまとめた「資金繰り表」も確認しましょう。
資金繰りを圧迫する主な要因
| 要因 | 資金繰りへの影響 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 空室・家賃滞納 | 入金が減っても返済や固定費は続く | 募集条件、周辺の入居状況、滞納への対応 |
| 家賃の下落 | 入居していても収入が想定を下回る | 周辺相場、競合物件、設備・管理状態 |
| 修繕・設備交換 | まとまった支出が発生する | 修繕履歴、建物の劣化、設備の使用年数 |
| 借入金利の上昇 | 変動金利などでは利息負担が増える可能性 | 金利・返済額の見直し条件、残高、残存期間 |
| 納税・保険料等の集中 | 特定の月に現金が減る | 納期限、更新時期、支払額 |
金融庁も、投資用不動産について、将来の賃料減少や大規模修繕を考慮した長期的な収支の検討を促しています。
家賃は立地や需給によって変わるため、購入時の金額が続く前提だけで判断しないことが大切です。
資金繰りを安定させる四つの備え
① 購入後にも現金が残る自己資金計画を立てる
自己資金は「物件価格の1割あれば十分」と一律に判断できません。必要額は、金融機関の審査、物件評価、収支、借入条件などによって変わります。
頭金に加えて、仲介手数料・登記費用・税金・融資関連費用などの諸費用と、購入後の運転資金も見込みましょう。
自己資金を多く入れると借入額を抑えられますが、預金を使い切ってしまうと、空室や故障に対応しにくくなります。購入に使うお金と、購入後に残すお金を分けて考えることが大切です。
② 月ごとの資金繰りと長期の収支を作る
まずは今後12か月の入出金を月単位で並べ、納税や工事代金の支払いが集中する月を確認します。そのうえで、借入期間や保有予定期間を見通した長期の収支表を作りましょう。
検討用の仮定として、「家賃収入が10%減る」「借入金利が1ポイント上がる」「修繕費が見積額より20%増える」などを置き、複数の条件が重なった場合も試算します。
これらの数字は予測値や公的基準ではなく、物件に合わせて調整する例です。
年間収支とあわせて、途中の月に現金が不足しないかを確認します。
③ 予備資金は必要な支払いから考える
「家賃収入の6か月分を残す」という考え方は、予備資金を検討する一つの目安になります。ただし、その金額で十分かは、毎月の返済額や建物の状態によって異なります。
実務上は、空室が続いても必要になるローン返済・管理費・税金などを洗い出し、何か月分を確保するか決める方法が役立ちます。
例えば、継続的な支払いが月30万円なら、6か月分は180万円です。これは大規模修繕費を含まない試算例であり、近く予定する工事や設備交換の資金は別途見込みます。
事業用の予備資金と、ご家庭の生活費・教育費・老後資金を区分すると、使えるお金を把握しやすくなります。
④ 修繕費は工事時期から逆算して準備する
外壁・屋根・防水・給排水設備・給湯器・エアコンなどは、点検結果や使用状況に応じた修繕・交換が必要です。
国土交通省のガイドブックに示される修繕周期や費用は、計画を立てるための参考値です。「築10年までは修繕不要」「15年で必ず交換」と決めず、管理会社・施工会社・メーカーの情報をもとに、物件ごとの計画を立てましょう。
例えば、10年後の工事に300万円を準備する場合、積立済み資金がなく、利息や工事費の上昇を考慮しなければ、毎月の準備額は次のとおりです。
300万円÷10年÷12か月=毎月2万5,000円
実際には、工事費の変動や修繕箇所の追加に備え、点検や見積りの更新にあわせて金額を見直します。
借換えや追加融資は返済後まで確認する
資金不足が見込まれる場合は、返済が滞る前に、資金繰り表や修繕見積書を用意して借入先へ相談しましょう。
| 方法 | 検討する場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 借換え | 金利や返済条件を見直したい | 手数料・登記費用等を含め、毎月の返済額と総負担を比較する |
| 返済条件の変更 | 一時的に返済負担を軽くしたい | 期間延長や元金据置き等を相談。変更後・据置期間終了後の返済も確認する |
| 賃貸物件向けの修繕・設備資金の融資 | 工事代金を一括で支払うと手元資金が不足する | 工事後の収支で追加返済を続けられるか確認する |
借換えや条件変更には金融機関の審査・合意が必要です。返済期間を延ばすと毎月の支払いを減らせる場合がありますが、総支払利息が増える可能性もあります。
また、「リフォームローン」という名称でも、賃貸物件に使えるとは限りません。
例えば、三菱UFJ銀行の「ネットDEリフォームローン」は、賃貸・店舗・事務所などの事業用物件を対象外としています。
商品名だけで判断せず、資金使途を確認してください。借入れで一時的に現金が増えても、空室や家賃水準などの問題が解消するとは限りません。
募集条件・管理内容・修繕の優先順位を見直し、改善が難しい場合は売却を含めた保有方針も検討します。
賃貸経営をこれからの暮らしにつなげるために
賃貸物件の家賃収入は、ご自身の生活や老後、家族への資産承継を支える大切な資金です。その役割を果たすためには、税金・返済・修繕を見込んだうえで、安心して使える金額を把握する必要があります。
PrivateFpでは、賃貸物件の収支や借入れ、ご家庭の家計、金融資産、老後資金を整理し、ライフプラン全体から資金計画を考えるお手伝いをしています。
「家賃収入があるのにお金が残らない」「修繕とローン返済を両立できるか不安」「相続した物件を持ち続けるか迷っている」。そのようなときは、現在の収支とこれからの暮らしを、一緒に整理してみませんか。
数多くのファイナンシャル・プランニングの経験から、自分自身に合った上手な不動産運用設計を支援します。
相談者に合った「最適解」を一緒に検討、お気軽に相談ください。
Q&A よくある質問
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満室なら資金繰りは心配ありませんか?
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満室でも、ローン返済や税金、修繕費の負担が大きければ、現金が不足する可能性があります。入居率に加えて、支払い後の残高と将来の支出を確認しましょう。
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修繕費は支払った年に全額経費にできますか?
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すべてがその年の修繕費になるわけではありません。通常の維持管理・修理に当たる支出と、資産の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする「資本的支出」を区分します。資本的支出は、原則として減価償却により各年の必要経費に算入します。名称だけでなく工事内容で判断するため、見積書・請求書の内訳を確認しましょう。
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余裕資金は繰上返済に使った方がよいですか?
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利息の軽減効果と、返済後に残る現金の両方を比べましょう。近い将来の修繕費や納税資金まで使ってしまうと、再び借入れが必要になることもあります。予備資金を確保したうえで、返済方法や手数料も含めて判断します。
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サブリース契約があれば家賃収入は変わりませんか?
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契約期間中でも、賃料の減額や契約解除が生じる可能性があります。借上賃料の見直し条項、修繕費の負担、免責期間、解約条件などを確認し、収入が変わる場合も見込んでおきまし
税制・法律・制度の取扱いについての記述は、発信時の関係法令等に基づき記載したものです。今後、変更の場合もあります。

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