【1級FP監修】2026年最新版、年収の壁を解説、賢い働き方や対策を考える

年収が一定額を超えると、税法上の理由や社会保険上の理由から負担が発生する「年収の壁」があります。
パート・アルバイトで働く方や、その配偶者の方から、
「結局、年収はいくらまでなら税金がかからないの?」
「103万円の壁は、もう気にしなくていい?」
「106万円と130万円は何が違うの?」
「扶養から外れないためには、いくらまで働ける?」
といったご相談を多くいただきます。
FP実務では、制度への誤解から不必要に年収を下げている方も散見されます。
年収の壁を正しく理解して、自身の家計に合った賢い働き方を考えていきましょう。
※本記事は2026年9月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。個別の適用は、勤務先、健康保険の保険者、年金事務所、自治体または税務署へご確認ください。
【結論】年収の壁は税法上と社会保険法上の二つ視点で考えましょう。
【2026年最新版】「年収の壁」が大きく変わります
2026年(令和8年)は「年収の壁」の考え方が大きく変わる年です。
令和8年度税制改正では、物価上昇への対応などから所得税の基礎控除・給与所得控除が見直されました。令和8年分は、給与収入のみでほかに所得がない場合、給与収入178万円以下であれば所得税等はかかりません。178万円を超えると所得税等が生じる可能性があります。
さらに社会保険についても、2026年10月には、いわゆる「106万円の壁」の賃金要件が撤廃予定です。
一方で、健康保険の扶養に関係する「130万円の壁」は残ります。
つまり、これからは単純に「年収○○万円を超えなければ大丈夫」と考えるのではなく、
①本人の所得税
②住民税
③配偶者側の税金
④社会保険への加入
⑤健康保険の扶養
を分けて考える必要があります。
所得税の「壁」は178万円へ
令和8年度税制改正では、所得税の基礎控除と給与所得控除が引き上げられました。
給与収入のみで、ほかに所得がない方の場合、
給与所得控除 最低74万円+基礎控除 最高104万円
=178万円
となり、原則として給与収入178万円以下であれば所得税等はかかりません。178万円を超えると所得税等が生じる可能性がある仕組みとなります。
この改正は原則として2026年12月1日に施行され、令和8年分の所得税から適用されます。令和8年11月までの源泉徴収事務は従来どおりで、令和8年12月の年末調整等で精算されます。
そのため、年の途中では「税金が引かれているのに178万円?」と感じるケースもありますが、最終的には年末調整等で精算される仕組みです。
住民税の壁は「178万円」ではありません
ここは特に注意したいポイントです。
「所得税が178万円までかからないなら、税金は全部178万円までゼロ」と思われるかもしれませんが、所得税と住民税は別制度です。
119万円は、令和8年中の所得を基に計算する令和9年度個人住民税の目安です。給与収入のみでほかに所得がない場合、住民税の所得割がかからない給与収入の目安は119万円以下です。
したがって、
「所得税がかからない=住民税もかからない」ではありません。
また、住民税には所得割とは別に均等割等があり、非課税となる基準は自治体や家族構成などによっても異なります。
「178万円」という数字だけで税負担を判断しないことが大切です。
配偶者の税金にも別の「壁」があります
夫または妻がパート等で働いている場合、本人に税金がかかるかだけでなく、配偶者が受けられる配偶者控除・配偶者特別控除も確認する必要があります。
令和8年分では、配偶者の収入が給与のみで、その他の要件を満たす場合、給与収入136万円以下なら配偶者控除、136万円を超え207万円以下なら配偶者特別控除の対象となる可能性があります。控除を受ける人の合計所得金額が900万円以下なら、配偶者の給与収入169万円以下まで38万円の配偶者(特別)控除を受けられます。
つまり、
本人の所得税の目安 → 178万円
配偶者側の38万円控除の目安 → 169万円
と、同じ数字ではありません。
控除を受ける人の合計所得金額が900万円を超えると控除額は段階的に減り、1,000万円を超えると適用できません。また、配偶者の給与収入が169万円を超えても、207万円以下までは控除額が段階的に減りながら対象となる場合があります。
配偶者以外の扶養親族について、令和8年分の所得税では、扶養親族の所得要件は合計所得金額62万円以下(給与収入のみなら136万円以下)です。扶養控除の対象となるのは原則として16歳以上の人です。
【関連記事】税扶養とは?メリット・デメリットと要件をわかりやすく解説|2026年版
2026年10月、「106万円の壁」が大きく変わります
税金以上に家計への影響が大きくなりやすいのが社会保険です。
なお、正社員など通常の労働者と比べ、週の所定労働時間と1か月の所定労働日数がいずれも4分の3以上の場合は、以下の短時間労働者向け要件とは別に、健康保険・厚生年金保険の加入対象となります。
これまで一定規模以上の企業で働く短時間労働者については、
- 週の所定労働時間20時間以上
- 月額賃金8.8万円以上
- 学生ではない
- 2か月を超える雇用の見込み
- 一定以上の企業規模
などが社会保険加入の判断材料となり、月額8.8万円を年換算した金額から、一般に「106万円の壁」と呼ばれてきました。
ところが、この月額8.8万円以上という賃金要件は2026年10月に撤廃されますです。
今後は「年収106万円を超えるか」という考え方よりも、
「週20時間以上働くか」
が重要になります。ただし、週20時間以上だけで全員が加入するわけではありません。2026年9月現在は、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等であること、学生ではないこと、2か月を超える雇用の見込みがあることなど、ほかの加入要件も確認が必要です。
現在の企業規模要件についても今後段階的に縮小され、
2027年10月~:36人以上
2029年10月~:21人以上
2032年10月~:11人以上
2035年10月~:企業規模要件を撤廃
という流れで社会保険の適用範囲が広がっていく予定です。
「130万円の壁」はなくなったわけではありません
106万円の壁と130万円の壁は、同じ社会保険でも意味が違います。
106万円の壁は、主に勤務先の社会保険に自分自身が加入するかという問題です。
一方、130万円の壁は、配偶者などの健康保険の被扶養者として認められるかという問題です。配偶者の場合は、20歳以上60歳未満であることなどを要件とする国民年金第3号被保険者にも関係しますが、子などは健康保険の被扶養者になっても第3号被保険者にはなりません。
原則として年間収入が130万円未満であることなどが扶養認定の基準となるため、
「106万円の壁がなくなる=130万円まで扶養で働ける」
という意味ではありません。
勤務先の社会保険加入要件を満たせば、130万円未満であっても自分自身で社会保険に加入する場合があります。
2026年4月から「130万円」の判定方法も変更
2026年4月1日以降の健康保険の被扶養者認定では、新しい取扱いが始まっています。
給与収入のみの場合、労働条件通知書などに記載された
時給・所定労働時間・勤務日数・諸手当など
から計算した年間収入の見込みが130万円未満で、給与以外の収入が見込まれず、生計維持などの要件も満たしていれば、原則として被扶養者として取り扱う仕組みです。契約上の諸手当や賞与も年間収入に含み、最終的な認定は加入先の健康保険の保険者が行います。
労働契約に明確な定めがなく、あらかじめ見込むことが難しい時間外労働による賃金などは、年間収入の見込額に含めない取扱いも示されています。
そのため以前より、
「今年いくら稼いだか」だけではなく、「どのような労働契約で働いているか」
が重要になっています。
ただし、給与以外に年金収入や事業収入などがある場合や、労働契約の内容が不明確で年間収入を算定できない場合は取扱いが異なります。
繁忙期の残業や人手不足による労働時間の延長などで収入が一時的に増えた場合は、事業主の証明を通常の確認書類とともに提出することで、引き続き被扶養者と認定される可能性があります。利用は同一人について原則連続2回までで、恒常的な賃上げや、本人が勤務先の社会保険加入要件を満たす場合は対象外です。最終的な判断は保険者が行います。
19歳以上23歳未満の家族|社会保険は150万円未満、税制は別基準
2025年10月1日以降、大学生年代の子どもなどについても取扱いが変わっています。
被保険者の配偶者を除く19歳以上23歳未満の方については、健康保険の被扶養者認定における年間収入要件が原則として
130万円未満 → 150万円未満
に引き上げられています。
健康保険の150万円未満基準は配偶者を除く人が対象で、学生であることは要件ではありません。年齢はその年の12月31日時点で判定します。令和8年分の所得税では、給与収入136万円以下なら特定扶養親族として63万円の扶養控除、136万円を超え159万円以下なら63万円の特定親族特別控除を受けられます。159万円を超えると控除額は段階的に減り、197万円を超えると対象外です。税制上の扶養と社会保険上の扶養は別々に確認してください。
【関連記事】ご家族の社会保険の扶養には、いつまで入れる?年齢と年収の基準を分かりやすく解説
「壁を超えないこと」が必ずしも正解ではありません
年収の壁について考える際、つい「いくらまでなら扶養内に収まるか」だけに目が向きがちです。
しかし、FPの立場からは、必ずしも「壁の直前で働く時間を減らすこと」が最善とは限らないと考えます。
社会保険に加入すれば保険料負担が発生し、一時的に手取りが減る場合があります。
一方で厚生年金に加入することで将来の老齢厚生年金が増えるほか、一定の要件を満たせば傷病手当金や出産手当金などの保障を受けられるメリットもあります。
大切なのは、
「壁を超えるか・超えないか」ではなく、壁を超えた後も含めて世帯全体の手取りと将来の保障を比較すること
です。

2026年版|「年収の壁」早見表
「年収の壁」は、税金の壁・配偶者控除の壁・社会保険の壁で意味が異なります。
2026年(令和8年)は税制・社会保険制度の改正が重なるため、数字だけではなく「何の壁なのか」を確認することが重要です。
| 年収等の目安 | 種類 | 何が変わる? | 2026年のポイント |
|---|---|---|---|
| 約110万円~ | 住民税 | 住民税が発生する可能性 | 均等割等の非課税基準は自治体・扶養人数等で異なるため、一律の「壁」ではありません |
| 119万円超 | 住民税 | 住民税の所得割が生じる可能性 | 令和8年中の所得を基に計算する令和9年度住民税の目安。均等割等とは基準が異なります |
| 130万円未満 | 社会保険 | 配偶者等の健康保険の扶養に入れるか | 原則的な収入要件。勤務先で社会保険加入要件を満たす場合は130万円未満でも本人加入となります |
| 150万円未満 | 社会保険 | 19歳以上23歳未満の被扶養者の収入要件 | 配偶者を除く19歳以上23歳未満は、年間収入要件が原則150万円未満 |
| 169万円以下 | 配偶者控除等 | 38万円の配偶者(特別)控除の範囲 | 配偶者の収入が給与のみで、控除を受ける人の合計所得金額が900万円以下の場合の目安 |
| 178万円超 | 所得税 | 本人の所得税等が生じる可能性 | 給与収入のみでほかに所得がない場合、178万円以下は所得税等がかからない目安 |
| 週20時間 | 社会保険 | 勤務先の健康保険・厚生年金への加入判定 | 2026年10月に月額賃金8.8万円以上の要件が撤廃。企業規模、学生、雇用見込みなど、ほかの要件も確認が必要 |
【関連記事】パート・アルバイトの社会保険の加入要件拡大、手取り減少も
家計に合った賢い働き方も
年収の壁を気にすることで、年収を下げて自分自身の家計を逼迫しては意味がありません。
社会保険加入でもメリットがあります。例えば、社会保険に加入することで、将来に老齢厚生年金として年金が受け取れます。万が一の際の障害年金や遺族年金も国民年金より手厚い保障があります。
自分のライフプランや家計、勤め先をよく考え、自分に合った壁の乗り越え方を検討してください。
PrivateFp合同会社では、ファイナンシャル・プランニングを通して、家計や働き方の整理をサポートしています。
制度の適用や税額・保険料は個別事情によって異なるため、必要に応じて税務署、自治体、勤務先、健康保険の保険者または年金事務所へご確認ください。
Q&A よくある質問
-
年収178万円までなら税金も社会保険料もかかりませんか?
-
178万円は、給与収入のみでほかに所得がない場合の所得税の目安です。178万円以下なら所得税等はかからず、178万円を超えると生じる可能性があります。
住民税や社会保険にはそれぞれ別の基準があります。社会保険は2026年10月以降、週20時間以上かどうかに加え、企業規模、学生でないこと、雇用見込みなどの要件を確認します。
-
年収130万円未満なら必ず夫・妻の社会保険の扶養に入れますか?
-
必ずしもそうではありません。
本人の勤務先で社会保険の加入要件を満たす場合には、130万円未満でも自分自身で健康保険・厚生年金に加入することがあります。また、被扶養者認定では年間収入だけでなく、他の収入や生計維持の要件も確認され、最終的には保険者が判断します。
-
扶養を外れて働いた方が得ですか?
-
収入、勤務時間、勤務先、配偶者の所得、家族構成などによって異なります。
社会保険料だけを見ると負担増ですが、収入をさらに増やせるのであれば、手取り額が再び増えていくケースもあります。
また、厚生年金や健康保険の保障まで含めて判断する必要があります。
税制・法律・制度の取扱いは、2026年10月1日時点の法令・公表情報に基づき記載しています。今後変更される場合があります。
一次情報|参考資料
公式サイト 国税庁ホームページ No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか
公式サイト 国税庁ホームページ 令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について
公式サイト 国税庁ホームページ No.1177 特定親族特別控除
公式サイト 日本年金機構ホームページ 社会保険の加入対象の拡大
公式サイト 日本年金機構ホームページ 労働契約内容による年間収入での被扶養者認定の取扱い
公式サイト 厚生労働省ホームページ 年収の壁・支援強化パッケージ
公式サイト 日本年金機構ホームページ 19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件
参考資料・リンク確認日:2026年10月1日。
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