【1級FP監修】遺族年金はどう変わる?「全員が5年で終了」ではない改正ポイントを解説

2025年6月13日、遺族年金制度の見直しを含む年金制度改正法が成立し、同年6月20日に公布されました。
遺族年金に関する主な改正は、2028年4月1日に施行される予定です。
今回の改正について、「遺族年金が5年間で打ち切られる」といった情報を目にした方もいるかもしれません。しかし、すべての遺族年金が一律5年間になるわけではありません。
主な見直し対象は、遺族年金のうち、一定の条件に該当する60歳未満の配偶者に対する「遺族厚生年金」です。
すでに受給している方、60歳以降に受給権が発生する方、2028年度に40歳以上になる女性、対象年齢の子を養育している間の給付などには経過措置があります。
また、給付期間が変わる一方で、これまで受給できなかった男性への支給、有期給付の増額、収入要件の撤廃、子に対する保障の拡充なども行われます。
制度の一部分だけを見て判断せず、「自分の世帯にどの改正が関係するのか」を確認することが大切です。
※本記事は2026年9月16日時点の法令・厚生労働省公表資料に基づく一般的な解説です。2028年の施行までに政省令や運用基準が公表・変更される場合があります。
【結論】今回の遺族年金改正で「自分が対象か」「万一の際に実際はいくら不足するか」を確認し、備えましょう。
遺族年金の種類
まず、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」を分けて考える必要があります。
| 種類 | 主な給付内容 | 今回の主な改正 |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 原則として、対象年齢の子がいる配偶者または子が対象 | 子の加算額の増額、子が受給しやすくなる見直し |
| 遺族厚生年金 | 厚生年金加入者などが亡くなった場合に、一定の遺族が対象 | 男女差の解消、原則5年間の有期給付、各種配慮措置 |
「対象年齢の子」とは、原則として次の子をいいます。
- 18歳になった年度の3月31日までの未婚の子
- 20歳未満で、障害等級1級または2級の状態にある未婚の子
現行制度と改正後の主な違い
対象年齢の子がいない配偶者について、現行制度は男女で受給条件が大きく異なります。
| 配偶者 | 現行制度 | 改正後 |
| 女性 | 30歳未満で死別した場合は原則5年間。30歳以上は原則無期給付 | 最終的には60歳未満で死別した場合、原則5年間。ただし20年かけて段階的に実施 |
| 男性 | 55歳未満で死別した場合は原則受給できない。55歳以上は受給権が発生し、原則60歳から無期給付 | 60歳未満で死別した場合、原則5年間の有期給付 |
| 男女とも | 60歳以上で受給権が発生した場合は無期給付 | 現行どおり無期給付 |
男性は2028年4月から、60歳未満の方が原則5年間の有期給付の対象になります。
一方、女性は一斉に60歳未満まで変更されるのではありません。施行直後の対象は、対象年齢の子がいない「2028年度末時点で40歳未満の女性」です。その後、20年かけて段階的に対象を広げます。
2028年度に40歳以上になる女性は、将来の年度になってから有期給付化の対象へ組み込まれるわけではなく、遺族厚生年金本体については経過措置の対象となります。
「5年の有期給付化」の影響を受けない方
次の方は、遺族厚生年金本体の5年有期給付化による影響を受けません。
| 対象者 | 取扱い |
| 2028年3月31日までに受給権が発生している方 | 現行の給付内容を維持 |
| 60歳以降に受給権が発生する配偶者 | 現行どおり無期給付 |
| 2028年度に40歳以上になる女性 | 遺族厚生年金本体は現行どおり |
| 対象年齢の子を養育している方 | 子が対象年齢にある間は現行どおり |
ただし、子が対象年齢を超えた後は、改正後に受給権が発生するケースでは、原則としてさらに5年間の増額された有期給付や、所得・障害状態に応じた継続給付の対象となる場合があります。
また、「2028年度に40歳以上になる女性は影響を受けない」という説明は、遺族厚生年金本体の有期給付化についてです。
中高齢寡婦加算の段階的縮小については、別に影響を受ける可能性があります。
プラス改正も
遺族厚生年金が5年の有期給付化だとマイナス改正ですが、プラスとなる改正もあります。
1.有期給付加算により約1.3倍に増額
5年間の有期給付には「有期給付加算」が新設されます。
遺族厚生年金本体に加算が上乗せされ、5年間に受け取る年金額は、現在の遺族厚生年金本体の約1.3倍になるとされています。
ただし、すべての遺族年金が一律に1.3倍になるわけではありません。実際の金額は、亡くなった方の厚生年金加入期間や報酬額などによって異なります。
2.年収850万円未満という収入要件を撤廃
現行制度では、遺族厚生年金の生計維持要件として、原則「年収850万円未満」という収入要件があります。
改正後の5年間の有期給付では、この収入要件が撤廃されます。したがって、年収850万円以上の配偶者でも、ほかの受給要件を満たせば受給できるようになります。
ただし、これは最初の5年間の有期給付に関する収入要件です。
5年終了後の「継続給付」では、改めて所得による判定があります。
3.収入や障害状態によっては5年後も継続給付
5年間の有期給付が終了した後も、次のような方には継続給付が設けられます。
- 障害年金の受給権がある方
- 収入が十分でなく、生活再建への配慮が必要な方
継続給付は、所得に応じて支給額が調整され、最長65歳まで受給できる仕組みです。
厚生労働省の公式資料では、単身者について就労収入が年122万円以下であれば全額支給とされ、2025年度税制改正後の地方税所得を前提にすると年132万円となる見込みです。亡くなった配偶者が夫で、妻が地方税法上の寡婦に該当する場合は年204万円程度が目安とされています。それを超えると所得に応じて段階的に調整され、遺族厚生年金額にもよりますが、月収がおおむね20万~30万円を超えると全額支給停止となる場合があります。
これらは現時点の見込みであり、2028年の実際の基準は、今後の政省令や税制、年金額改定などを含めて確認する必要があります。
4.死亡分割により将来の老齢厚生年金が増える場合がある
5年間の有期給付の対象者について、亡くなった配偶者のほうが報酬額が高かった場合、その厚生年金記録の一部を遺族側の記録に上乗せする「死亡分割」が設けられます。これにより、遺族本人が将来受け取る老齢厚生年金が増える場合があります。
実際の増額幅は、夫婦それぞれの厚生年金加入記録や報酬額などによって異なります。
5.子どもに対する保障は拡充【遺族基礎年金】
遺族基礎年金の子の加算額は、次のように見直されます。
| 子の人数 | 改正前 | 改正後 |
| 1人目・2人目 | 1人につき年234,800円 | 1人につき年281,700円 |
| 3人目以降 | 1人につき年78,300円 | 1人につき年281,700円 |
金額は、いずれも比較のための「2024年度価格」です。実際の2028年度の金額は、物価や賃金に応じた年金額改定によって変わります。
現在すでに対象の年金を受給している方も、加算額引上げの対象となる予定です。
加算額の引上げに加え、子を養育する配偶者の再婚、年収850万円以上、子が直系親族等の養子になった場合、死亡後に離婚した元配偶者が子を引き取った場合など、養育者の事情によって子が受給できなかったケースでも、子自身が遺族基礎年金を受けやすくなるよう見直されます。
遺族年金制度を理解する
今回の遺族年金改正は、単純に遺族年金を「5年で終了する」ものではありません。
- 主な対象は、60歳未満で配偶者と死別した一定の方
- 既受給者、60歳以降の受給権発生者、2028年度に40歳以上になる女性などには経過措置がある
- 有期給付は約1.3倍に増額され、収入要件も撤廃される
- 障害や収入の状況によっては最長65歳まで継続給付がある
- 男性や子どもについては、受給対象や給付額が拡充される
- 中高齢寡婦加算は、新規発生分を25年かけて段階的に縮小する
大切なのは、「自分が対象か」「万一の際に実際はいくら不足するか」を確認し、備えることです。
ポイントは、
- 夫婦それぞれの遺族基礎年金・遺族厚生年金
- 勤務先の死亡退職金や弔慰金、企業年金
- 住宅ローンの団体信用生命保険
- 預貯金やNISAなどの金融資産
- 現在加入している生命保険
- 残された家族の収入と生活費
- 子どもの教育費が必要となる期間
これらをすべて確認したうえで、将来のキャッシュフローに不足がある場合に限り、生命保険や貯蓄計画を調整することが大切です。
PrivateFp合同会社では、ねんきん定期便や家計状況をもとに、万一の場合の公的保障、必要保障額、今後のキャッシュフローを総合的に整理します。
相談者に合った備えを一緒に検討しますので、お気軽にご相談ください。
Q&A よくある質問
-
遺族厚生年金は、全員が5年間で終了するのですか?
-
いいえ。すでに受給している方、60歳以降に受給権が発生する方、2028年度に40歳以上になる女性などは、遺族厚生年金本体の有期給付化の影響を受けません。
-
現在すでに遺族厚生年金を受給しています。支給期間は変わりますか?
-
今回の改正によって、現在受給している遺族厚生年金が5年で終了することはありません。2028年3月31日以前に受給権が発生している方には、現行の給付内容が維持されます。
-
5年間が終わると、遺族厚生年金は必ず支給額がゼロになりますか?
-
必ずしもゼロにはなりません。障害年金の受給権がある方や収入が十分でない方には、所得に応じて最長65歳まで継続給付が行われます。
-
制度改正に備えて生命保険を増やすべきですか?
-
改正だけを理由に、すぐ保障を増やす必要はありません。遺族年金、勤務先の死亡保障、住宅ローンの団信、預貯金、金融資産、残された家族の収入を確認し、実際に不足する金額と期間を計算してから判断しましょう
制度の適用可否や受給額は、加入記録・家族構成・所得などにより異なります。個別の受給見込みは年金事務所等へご確認ください。
参考資料
一次情報 公式サイト 厚生労働省ホームページ 遺族厚生年金の見直しについて
一次情報 公式サイト 厚生労働省ホームページ 年金制度改正法が成立しました
一次情報 公式サイト 厚生労働省ホームページ 年金制度改正法の概要(詳細版)
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