【1級FP監修】小規模宅地等の特例とは?最大80%減額の要件・計算方法・申告手続きを解説

住宅イメージ

相続財産に自宅や事業用の土地が含まれている場合、「小規模宅地等の特例」を利用できるかどうかで、相続税の負担が大きく変わることがあります。

一定の要件を満たす場合には「小規模宅地等の特例」を利用することで、対象となる土地の相続税評価額を最大80%減額できます。

ただし、減額されるのは相続税額そのものではなく、相続税の計算上、課税価格に算入する土地の価額です。また、土地の利用状況、取得する人、相続後の保有状況などによって適用結果が変わります。

本記事では、小規模宅地等の特例の基本的な仕組み、限度面積、取得者の要件、計算方法、申告時の注意点を解説します。

※本記事は2026年9月16日時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。

【結論】宅地の相続税評価額を最大8割減額できる『小規模宅地等の特例』を利用するなら、原則として相続税申告書への記載と必要書類の添付が必要です。

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小規模宅地等の特例とは

小規模宅地等の特例とは、相続または遺贈により取得した宅地等のうち、相続開始直前に被相続人等の居住用または事業用に供されていた一定の宅地等について、相続税の課税価格に算入する価額を50%または80%減額できる制度です。原則として建物または構築物の敷地に供されている宅地等が対象となり、棚卸資産などは除かれます。

自宅の敷地に適用される「特定居住用宅地等」の場合、330㎡までの部分について80%の減額を受けられる可能性があります。

330㎡は土地全体の面積要件ではなく、減額対象となる部分の上限です。330㎡を超える土地でも、要件を満たす330㎡までの部分について適用できる場合があります。

小規模宅地等の特例の対象宅地と限度面積

宅地等の区分主な対象限度面積減額割合
特定居住用宅地等被相続人等が居住していた宅地等330㎡80%
特定事業用宅地等被相続人等が事業に使用していた宅地等400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等一定の同族会社が事業に使用していた宅地等400㎡80%
貸付事業用宅地等賃貸住宅や貸駐車場などに使用していた宅地等200㎡50%

特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等の限度面積は、合計400㎡です。

貸付事業用宅地等を選択しない場合には、特定居住用宅地等330㎡と、特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等の合計400㎡を、それぞれの限度面積まで選択でき、合計730㎡まで80%減額できる可能性があります。

貸付事業用宅地等を含めて選択する場合は、面積を一定の割合で換算して限度面積を判定するため、単純に合計730㎡とはなりません。特定事業用・特定同族会社事業用の選択面積をA、特定居住用をB、貸付事業用をCとすると、「A×200/400+B×200/330+C≦200㎡」を満たす範囲で選択します。

事業用・貸付事業用の宅地等では、取得者が申告期限まで事業または貸付事業を承継・継続し、宅地等を保有することなどが主な要件です。特定同族会社事業用宅地等では、申告期限時点の法人役員要件もあります。また、相続開始前3年以内に新たに事業用または貸付事業用に供された宅地等は、一定の場合を除き対象外です。

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特定居住用宅地等の取得者の要件

配偶者が取得する場合

被相続人の配偶者が相続または遺贈により取得する場合、配偶者本人について居住継続要件や保有継続要件はありません。ただし、対象宅地等の利用状況、遺産分割、申告手続きなどの共通要件を満たす必要があります。

同居親族が取得する場合

一般に「同居親族」と呼ばれますが、法令上は、相続開始直前に被相続人の居住用宅地等の上にある一棟の建物の所定部分に居住していた親族をいいます。原則として相続開始直前から申告期限までその建物に居住し、相続開始時から申告期限まで宅地等を保有する必要があります。区分所有登記の有無によって判定範囲が異なります。

別居親族が取得する場合

いわゆる「家なき子」に該当する別居親族も対象となる可能性があります。ただし、これは法令上の正式名称ではなく、次の6要件をすべて満たす必要があります。

  • 取得者が、居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち、日本国籍を有しない人に該当しないこと
  • 被相続人に配偶者がいないこと
  • 相続開始直前に、被相続人の居住用家屋に居住していた被相続人の相続人がいないこと(相続放棄があった場合は、放棄がなかったものとして判定)
  • 相続開始前3年以内に、日本国内にある取得者本人、配偶者、三親等内の親族または一定の関係法人が所有する家屋に居住していないこと(相続開始直前に被相続人の居住用に供されていた家屋を除く)
  • 相続開始時に取得者が居住している家屋を、相続開始前のいずれの時点でも取得者本人が所有していないこと
  • 対象となる宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで保有すること

国際相続では、納税義務区分や国籍の判定が複雑になるため、税理士または所轄税務署へ個別に確認してください。

評価額の計算例

相続税評価額5,000万円の自宅敷地について、その全体が特定居住用宅地等に該当し、限度面積以内である場合を考えます。

  • 減額される金額:5,000万円×80%=4,000万円
  • 課税価格に算入される金額:5,000万円−4,000万円=1,000万円

4,000万円は相続税の減税額ではありません。実際の相続税額は、他の相続財産、債務、基礎控除、相続人の人数などを含めて計算します。

なお、土地の相続税評価額は原則として路線価方式または倍率方式で計算します。公示地価や基準地価格、売買価格と同じ金額になるとは限りません。

小規模宅地等の特例を受けるための申告手続き

特例の適用を受けるには、相続税申告書に適用を受ける旨を記載し、小規模宅地等についての課税価格の計算明細書などの必要書類を添付します。対象となり得る宅地等などを取得した相続人等が2人以上いる場合は、適用対象の選択について関係する取得者全員の同意も必要です。

申告期限は、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。

法令上、適用対象となる申告書には期限後申告書や修正申告書も含まれます。ただし、適用の記載、必要書類の添付、分割や取得者などの要件を満たす必要があり、申告後に自由に適用を選び直せる制度ではありません。期限後申告では、無申告加算税や延滞税がかかる場合があります。

相続税の申告期限時点で、特例を適用したい宅地等が未分割の場合、その未分割の宅地等については当初申告で原則として特例を適用できません。申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、法定申告期限から3年以内に分割された場合は、特例を適用できることがあります。税額が減る場合は、原則として分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求を行います。税額が増える場合は、修正申告が必要になることがあります。

適用時に注意したいケース

老人ホームなどに入所していた場合

被相続人が老人ホームなどに入所していた場合でも、入所前の自宅敷地が対象となる可能性があります。

主な確認事項は、原則として相続開始直前に要介護・要支援認定等を受けていたこと、入所先が法令上の対象施設であること、入所後に自宅を事業用または新たに被相続人等以外の人の居住用に使用していないことなどです。施設名だけでなく、法令上の施設類型に該当するかを確認します。

帰宅の意思や家財道具の保管は、独立した適用要件ではありません。入所直前にその家屋が生活の本拠であったかを確認した上で、認定状況、施設類型、入所後の利用状況などを判定します。

申告期限前に土地を売却する場合

同居親族や別居親族、事業承継者など、申告期限までの保有継続が要件となる人が期限前に土地を売却すると、売却部分が対象外になる可能性があります。

配偶者には原則として保有継続要件がないため、取得者ごとに判断が異なります。

相続時精算課税により宅地等を贈与取得していた場合

相続時精算課税を選択した贈与によって取得した宅地等には、その宅地等が相続税の課税価格へ加算される場合でも、小規模宅地等の特例を適用できません。相続または遺贈により取得した宅地等ではないためです。

二世帯住宅の場合

二世帯住宅では、建物の構造や区分所有登記の有無、居住実態によって適用範囲が変わることがあります。
建築や登記を行う前に、税理士等へ確認することが重要です。

まとめ

小規模宅地等の特例は、一定の宅地等について相続税評価額を最大80%減額できる制度です。

一方で、宅地等の利用状況、取得者、相続後の居住・事業・保有状況、遺産分割、申告手続きなど、確認すべき要件が数多くあります。

PrivateFp合同会社では、相続全体の資金計画、納税資金、住まいの承継、専門家との連携についてサポートしています。個別の適用可否、税額計算、税務申告については、税理士または所轄税務署へご確認ください。

土地の購入や二世帯住宅の建築を、小規模宅地等の特例だけを理由に判断することは適切ではありません。将来の居住計画、資金計画、登記方法、相続人間の調整などを含めて検討する必要があります。

相談者に合った「最適解」を一緒に検討、お気軽に相談ください。

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佐久眞 盛春の顔写真
執筆・監修: 佐久眞 盛春 (CFP®/1級FP技能士)
Private Fp 合同会社 代表社員。NISA・iDeCoなどの資産運用、生命保険見直し、家計改善、ローン相談のFP実務支援、キャリアコンサルティングが専門。 プロフィールCFP®情報

作成方法:一次情報(法令・公的統計)を確認のうえ執筆。生成AIは草案作成・表現整理に限定し、最終チェックは人手で実施。内容は執筆時点の情報であり、投資勧誘・個別推奨ではありません。

小規模宅地等の特例に関するQ&A

特例を使って相続税がゼロになる場合も申告が必要ですか?

特例を適用することで相続税がゼロになる場合でも、原則として相続税申告書への記載と必要書類の添付が必要です。

なお、相続税の申告が必要かどうかを判定する際は、小規模宅地等の特例を適用する前の財産額を基に確認します。

330㎡を超える土地には適用できませんか?

土地全体が330㎡を超えていても、要件を満たす部分のうち330㎡までについて適用できる可能性があります。

家を所有していない別居の子なら必ず対象になりますか?

対象になるとは限りません。
被相続人の配偶者や同居相続人の有無、過去3年間に居住した家屋の所有者、現在居住している家屋の過去の所有状況など、複数の要件を確認する必要があります。

老人ホーム入所後に自宅を賃貸した場合はどうなりますか?

入所後に自宅を第三者へ賃貸した場合、原則として賃貸部分は特定居住用宅地等の対象外となります。貸付事業用宅地等に該当するかは別途判定が必要です。入所先、認定状況、賃貸した範囲などを含めて個別に確認してください。

税制・法律・制度の取扱いについての記述は、発信時の関係法令等に基づき記載したものです。今後、変更の場合もあります。

一次情報 公式サイト 国税庁ホームページ No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例

一次情報 公式サイト 国税庁ホームページ No.4208 相続財産が分割されていないときの申告

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